ライフサイエンス事業を東洋鋼鈑の新たな柱に!
-市場調査を開発につなぐ新規事業の醍醐味-
主力の鋼板事業に加え、新たな柱としてライフサイエンス事業を展開する東洋鋼鈑は、得意とする表面処理技術を応用したDNAチップの研究を2000年に開始。
2018年には山口大学との共同研究を通じ、抗がん剤の副作用リスクを予測するDNAチップキットを上市し、DNAチップではじめて体外診断用医薬品の承認を取得した。さらにその後も新たな製品開発を継続し、医療発展への貢献を目指している。
M.O.
技術研究所機能化技術研究部
ライフサイエンス技術グループ
M.M.
事業推進室
ライフサイエンス事業グループ
J.M.
事業推進室
ライフサイエンス事業グループ
新たな事業を自分の手で大きくしたい!
新規分野に挑戦する気概に共感
M.O. 大学院時代、私が所属していたDNAチップの研究室に東洋鋼鈑の社員の方が相談に来られたのがきっかけです。当時、東洋鋼鈑はDNAチップの開発を始めようとしているところで、一緒にやってみないかとお声掛けいただきました。これまでの研究で得た知見を生かしつつ、これからスタートする新しい事業を自分の手で大きくできることにも魅力を感じて入社を決めました。
M.M. 私は分子生物学が専門で、これまで公的機関や外資系企業で再生医療やがんの研究など臨床につながる基礎研究に携わってきました。そんな中、東洋鋼鈑と共同研究に取り組む機会があり、それがご縁となり入社に至りました。鉄鋼がメイン事業の日本メーカーということで転職にあたっては迷いもありましたが、自身の専門性と東洋製罐グループホールディングスの持つ技術や特性を掛け合わせることで、ライフサイエンス事業への貢献ができると考えました。
J.M. 地元が山口ということもあり、幼いころから東洋鋼鈑の存在は知っていました。鉄鋼メーカーで働いていた祖父からよく工場の話を聞いていたこと、私自身、機械が大好きということから、製造ラインの巨大な機械に携われたら面白いのではないかと鉄鋼業界に興味を持ちました。東洋鋼鈑は冷間圧延と表面処理の技術をベースに、機能材料やDNAチップなどの新しい分野にも積極的にチャレンジしており、その挑戦する社風に共感。大学の先輩も何人も入社しているという安心感や、お会いした社員の方々の人柄の良さも入社の決め手になりました。
M.O. 技術研究所で、遺伝子検査に用いるDNAチップの設計・開発・評価・最適化に取り組んでいます。当社が手掛けるDNAチップは、主に医療分野での疾患診断や副作用予測などに用いられるものです。当然ながら高い品質と精度が求められ、入念な検証と安定性を確保する試験が欠かせません。そのため、チームのメンバーや外部関係者と密にコミュニケーションを取りながら、開発した製品の保険収載(医療行為や医薬品、医療機器が保険適用の対象として認められること)に向けてプロジェクトを遂行しており、データ解析やプロジェクトの進捗管理も担当しています。
M.M. 私は技術研究所ではなく筑波大学内に設置されているサテライトオフィスで、DNAチップに関するマーケティングや研究に携わっています。技術研究所とは異なる大学内の研究環境を最大限に生かし、設計・開発から製品化に向けてさまざまな業務に取り組んでいます。
J.M. もともとは機械工学が専門ということもあり、最初は遺伝子検査工程を自動化する遺伝子解析装置の開発が担当業務でした。協力メーカーと一緒に設計・開発・性能評価を繰り返し、無事製品化までこぎ着けることができたので、現在はM.M.さんと同じく筑波サテライトで遺伝子検査キットの試薬の開発に取り組んでいます。高感度で変異を検出し、かつ安定した検査が行えるよう、遺伝子増幅に関わる試薬設計やチップに搭載するDNA配列の最適化などに奮闘する毎日です。異分野へのチャレンジで苦労もありますが、皆さんに教えを請いながら新しい知識を日々吸収しています。
DNAチップと遺伝子解析装置の開発実績で
顧客の信頼と認知を獲得
M.O. 技術グループと事業グループに分かれて、技術的な研究は技術グループが、マーケティングや営業活動は事業グループが担当しています。私が所属する技術グループでは、地元の山口大学との共同研究を積極的に推進しており、パートナーの輪を広げるために製薬企業との連携にも力を入れています。
M.M. 私たち事業グループは、どのような遺伝子検査が必要とされているか、医療現場でのニーズを吸い上げ提案するのが役割の一つです。製品を使用いただいている顧客、共同研究先の先生方やさまざまな学会、市場の動向から情報を収集し、次なる製品のマーケティング戦略を検討しています。一方で、学術的環境にある筑波サテライトにおいては研究活動をしており、技術グループと協力しながら新製品に向け設計開発に取り組んでいます。
J.M. 最初は技術グループに所属していましたが、現在は事業グループに席を置いています。異動後も引き続き開発に取り組んでいますが、顧客にアクセスしやすい環境を活かして、試作品のデモンストレーションやすでに上市した製品のフォローアップなどを行い、新たな製品の開発に繋げています。グループ間の垣根は低いので、製造課、技術グループと頻繁にコミュニケーションを取りながら、全員で一丸となって横断的に取り組んでいます。
M.O. 2000年からスタートした東洋鋼鈑のライフサイエンス事業は、表面処理に着想を得たDNAチップの素材開発が発端でした。同時期にDNA開発に乗り出した競合他社も多数ある中、山口大学との産学連携プロジェクトを通じて地道な取り組みを続けた結果、検査装置や遺伝子検査キットの原型を生み出すことに成功しました。やはり最初の製品を生み出すまでは、苦労の連続でした。当社では経験したことのない分野ですし、実際に製品を使う検査センターの方からどのような評価をいただくか想像もつかなかったので。まさに生みの苦しみを味わいましたが、これが認められたことで顧客へのアプローチが可能となり、目標としていた臨床検査業界への進出を果たすことができました。
M.M. これまでに開発された製品をベースに、設計開発責任者として2023年度に悪性リンパ腫を対象とする診断補助キット「ジーンシリコン ® DNAチップキット MYD88・CD79B(研究用試薬)」を製品化しました。マーケティングから設計開発、顧客対応まで製品のスタートから上市まですべてに関わった、非常に思い入れのある製品です。現在、この製品は検査センターにて受託解析に利用されています。比較的短期間でローンチできたのは大きな成果であり、先行製品で培った技術を最大限生かし、サイエンス寄りの視点も加えながら、試行錯誤と継続的な努力で開発を推し進めた結果だと捉えています。
J.M. 私が開発して最初に世に出したのは遺伝子解析装置です。この装置の開発過程で最も苦労したのは、医療機器ならではの規格試験への対応でした。開発が終盤にさしかかったタイミングで、電磁波により機器が誤作動を起こさないかを評価する試験に合格する必要があるのですが、東洋鋼鈑も一緒に開発に取り組んでいた協力メーカーも電磁波にかかわる試験の経験はゼロ。そのためNGが連発し、1週間で合格にこぎ着ける予定が3カ月以上かかってしまいました。京都の試験場でNGが出たらすぐに山口へ戻って原因を突き止めて改造し、予備試験をしてから再び装置とともに京都に向かうという繰り返し……。体力的にも精神的にも大変でしたが、無事製品化にこぎつけることができて本当にうれしかったです。
M.O. 新製品開発においては、マーケティング側と製造側をいかにつなげられるかも重要ですね。現在、これまで開発してきた製品が評価され、少しずつですが顧客の信頼と認知を獲得している状況なので、事業規模を拡大すべくさらに努力を重ねようとしているところです。
M.M. 事業グループとしては、既存の製品をいかに販売へとつなげられるかも大きな課題だと考えています。
「0から1」から「1から10…100」へ!
サイエンスを社会実装するために
J.M. 開発した製品が実際に医療現場で使われ、患者さんの治療に役立てられていることに達成感を覚えています。開発中は何度も壁にぶつかり、うまくいかずに落ち込むこともありますが、完成した製品が検査センターに導入され、受託した検体の検査が無事完了したと報告を受けたときの満足感は何物にも代えがたいです。会社の規模に比例してチームメンバーの数はそれほど多くないので、自分の意見が製品に反映されやすい、それもやりがいにつながっています。良いアイデアなら経験が少なくてもどんどん採用してもらえますし、若手のうちから責任のある仕事を任せてもらえるのもうれしいですね。
M.M. 「サイエンスの社会実装」にやりがいを感じます。基礎研究が製品開発に生かされ、その製品が世の中に出て、誰かの役に立っているというのはとても感慨深いことです。東洋鋼鈑には、見込みがなさそうだからとすぐに諦めず、コツコツと努力を積み重ねる姿勢を大切にする社風があります。J.M.さんのように異分野を専攻していた人など多様な人材を受け入れ、フォローし合いながら取り組む姿勢も備わっている会社でもあるので、私も高いモチベーションを維持できています。
M.O. 製品開発が成功したときに味わう達成感、そして、医療分野への貢献が何よりのやりがいですね。キャリアを積み重ねる中で成長機会や裁量が増し、業務が発展していくと同時に、専門性が深化していくのもこの仕事の魅力です。ライフサイエンス事業は伸びしろが大きい分野。さまざまな可能性を秘めた世界で勝負できるのは、とにかく楽しいですね。徐々に製品の数も増えてきたので、現在は次の製品を生み出そうとみんなでアイデアを出し合っています。0から1へのステージが、1から10、さらには100へのステージへ――。事業規模を拡大していける面白さもあります。
東洋鋼鈑の技術力×ライフサイエンスで
医療分野へのさらなる貢献を目指す
J.M. 当面は専門性を高め、より高性能な製品を生み出しつつ最適な検査システムを構築するのが目標です。遺伝子解析装置とDNAチップ、両方の開発を経験させてもらったので、そこで培った知見を掛け合わせて技術をさらに発展させていきたいと考えています。そして、ライフサイエンス事業を東洋鋼鈑の大きな柱に育てていきたいです。
M.M. DNAチップを中心としたライフサイエンス事業のさらなる推進が中長期の目標です。また、東洋鋼鈑の技術力でDNAチップ以外の新製品を生み出す検討もしています。当社のライフサイエンス事業をより魅力あるものへと発展させ、一人ひとりが積極的に仕事に取り組み、生き生きと活躍できる職場環境を実現させたいです。
M.O. DNAチップの技術をベースに、遺伝子検査の新たな技術と応用の開発に貢献していきたいと思っています。具体的には、DNAチップの設計と改良を進め、適用領域を拡大していくのが目標です。また、オープンイノベーションを念頭に、大学等の研究機関や企業との協力関係をより強化していきたいですね。これまで培ってきた知識と経験を生かし、ライフサイエンス分野における遺伝子検査の進歩と医療における患者さんのQOLの向上に貢献したい――。予防医療やヘルスケア分野も視野に入れています。
M.M. 東洋鋼鈑には、日本初の民営ぶりきメーカーとしての歴史があります。私自身も、DNAチップ開発における東洋鋼鈑の歴史の一部を作っていければと思っています。何メートルもの薄板のロールを扱う一方で、数ミリ角のDNAチップを扱うというギャップのあることに果敢に挑戦する魅力と、その開発を支える資本力も備える会社です。高い倫理観を持ち、社員一人ひとりが個性を生かしながら成長できる職場なので、皆さんにも興味を持っていただけたらうれしいです。
M.O. それぞれがやりたいことをしっかり支えてくれる会社です。ライフサイエンス事業に限らず、AIなど先端技術にも目を向けて挑戦していこうとしています。新しい分野への取り組みに挑戦したいと思ってもらえる人ならウェルカムです!
J.M. 新しいことに挑戦しようとすると壁にぶつかることが多いですが、そこには前例のないことに取り組む面白さがあります。ぜひ仲間として一緒に歩んでいきましょう!