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Project Challenge

Vol.2
新製品の開発プロジェクト プロジェクトチャレンジ

リミッターを外して固定観念を打ち破る!

-画期的手法を用いた新めっき製品開発の裏側-

プロジェクト概要

既存技術では太刀打ちできないめっき技術を客先から求められたメンバーたち。その要望に応えるべく、固定概念を打破。繰り返される試行錯誤と葛藤の中、脈々と継承されてきた「技術の可能性を追求する」精神で扉をこじ開けた。

その結果生まれた新製品は、東洋鋼鈑の電池部材開発の歴史に新たな一歩を記すものとなった。

シート状の新めっき素材「ニッケルトップ」

プロジェクトメンバー

生産技術部 K.Y.さん

K.Y.

生産技術部

技術研究所金属機能材研究部 薄板材料グループ S.H.さん

S.H.

技術研究所金属機能材研究部
薄板材料グループ

下松事業所冷延鋼板工場 第2表面処理課第5めっき係 T.K.

T.K.

下松事業所冷延鋼板工場
第2表面処理課第5めっき係

自身の専門性を生かし、
活躍できる環境を求めて

なぜ東洋鋼鈑に入社しようと思ったのですか?

真剣な眼差しでインタビューに答える生産技術部 K.Y.さん

T.K. 学校の教授からの勧めでした。それまで学んできた材料工学の知識が生かせると思いましたし、同じ学校出身の先輩が多いという安心感もありました。

S.H. 高等専門学校卒業後、普通に就職するつもりでしたが、東洋鋼鈑には国内留学制度(社員として在籍したまま学校へ留学できる制度。在学中も給与を受け取れるため、学業に専念できる)があると知り、それが決め手で入社を決めました。

K.Y. 大学院での工業化学の研究の知見を生かしつつ、何か世の役に立つものを作りたいと思いメーカーを志望しました。製品メーカーと素材メーカーで迷いましたが、多様なものづくりに寄与できる点を考慮して素材メーカーを選択。同じ素材メーカーの中でも、さまざまな事業を展開している東洋鋼鈑を就職先に選びました。会社の規模的にも活躍のチャンスがありそうだと感じましたし、社内の雰囲気が良かったのも決断の後押しになりました。

真剣な眼差しでインタビューに答える生産技術部 K.Y.さん

現在の仕事内容を教えてください

笑顔でインタビューに答える下松事業所冷延鋼板工場 第2表面処理課第5めっき係 T.K.

K.Y. 技術研究所やマーケティング部を経て、現在は生産技術部の責任者として鋼板事業における製造技術の向上、技術開発、新製品の事業化を担当しています。関係部署と連携しながら取り組みを推進しているところです。

S.H. 技術研究所で主に電池用部材の研究開発を行うグループのリーダーとして、競合他社に先行した新材料の研究開発を行っています。マーケティング部と連携した市場調査・顧客調査、調査結果に基づく仮説実験、市場(ターゲット)への仮説提案・PR、具体的な開発、開発品の知財化など業務は多岐にわたります。

T.K. 工場の製造スタッフ、技術研究所の研究員を経て、現在は冷延鋼板工場の製造ラインの係長というポジションで、日々の生産や人的リソースの管理業務を担っています。現在受け持っている製造ラインで扱っているのは、これからご紹介する我々が開発した新めっき製品です。

笑顔でインタビューに答える下松事業所冷延鋼板工場 第2表面処理課第5めっき係 T.K.

リミッターを外したから完成した
型破りな新めっき製品

皆さんが開発された新製品とはどのようなものか教えてください

身振り手振りを交えてインタビューを受けるK.Y.さんとS.H.さん

T.K. お客様の製品情報に関することなので詳しくお話しできず恐縮ですが、画期的な手法で作った電池部材向けの新めっき素材を開発しました。

S.H. 当時、私は本社のマーケティング部にいました。新しい市場ニーズを見つけるセンス、あるいは見つけ出すまでアプローチし続ける気概があれば、きっと新製品を生み出せるはずだと考え、鋼板事業関連製品の用途や求められている付加価値、市場での優位性などを徹底的に調査。電池市場に可能性を見いだし、数年分の蓄電技術に関する学会の資料にもすべて目を通しました。その上で、100社以上のお客さまへの提案を続けた結果、新たなめっき素材を電池部材として渇望するお客さまにたどり着いたのが始まりでした。

K.Y. 当時、技術研究所でグループリーダーを務めており、S.H.さんからこの件について相談を受けました。実現の難易度が非常に高いアイデアであることは間違いありませんでしたが、「よし! やろう!」と覚悟を決め、マーケティング部と連携を取りつつ、グループのメンバーであるT.K.さんと開発に着手しました。

身振り手振りを交えてインタビューを受けるK.Y.さんとS.H.さん

開発が本格化するまでの道のりをお聞かせください

笑顔でインタビューに答える技術研究所金属機能材研究部 薄板材料グループ S.H.さん

S.H. 顧客訪問の初期段階では、実現性に乏しい希望仕様に何とか応えようと試作を繰り返すのが精いっぱいで、単なる“試作屋”に徹していたというのが実情でした。この現状を打破するため、お客さまが取得する特許を徹底的に調べて課題を掘り起こしながら、仮説を立てては提案するという地道なアプローチを繰り返しました。次第にお客さまも当社が保有する技術要素に興味を示されるようになり、本格的な開発検討のきっかけをつかむことができました。

T.K. とはいえ、これまでの技術や既存設備設計上の制約を考慮して作製したサンプルはすべてNG判定で……。

K.Y. そこで我々が出した結論が、「リミッターを外してブレイクスルーをもたらす」でした。めっきを生業にした技術者、研究者としてのプライドもあったので、まだまだやれることがあると証明するべく、思い込みや固定概念を取っ払った攻めた手法を試すことにしました。その結果、ようやく新めっきの原型的な試作材が完成。これが顧客の要求特性を満たし、開発にエンジンがかかりました。

笑顔でインタビューに答える技術研究所金属機能材研究部 薄板材料グループ S.H.さん

開発が本格化してからは、どのような苦労がありましたか?

笑顔で答える生産技術部 K.Y.さん

S.H. 最初にぶち当たった壁は、「社内の声」でした。あまりにも型破りな挑戦であるが故に、「本当に実現できるのか!?」という懐疑的な意見が噴出し……。それでも、今回の新製品を上市できたらその分野で100%のシェアを独占できる、オンリーワンになれるという自信があったので、諦めずにエビデンスを集めては何度も説得にあたりました。

T.K. このプロジェクトを成功させることができれば、東洋鋼鈑の新たな強みを作れると思いました。社内でも賛否両論がある中、K.Y.さんが中心となってさまざまな部門を巻き込み、結果的にみんなが同じ方向を向いて進むことができたのが成功の鍵だったと思っています。

K.Y. マーケティング部が果たしてくれた役割も大きかったですね。それまでは本社と技術研究所、生産技術部門がうまくリンクできていない部分がありましたが、本案件に関してはマーケティング部が潤滑剤となってくれたおかげで、部門間の連携やコミュニケーションが円滑に進みました。

笑顔で答える生産技術部 K.Y.さん

全員が同じ目線で知力を結集!
不可能を可能に!

試作ラインの立ち上げから量産までの道のりも教えてください

S.H. この開発が完全に軌道に乗ったと感じたのは、初めてフープ品(リール状の金属板材に、連続的にめっきしたもの)を納品したときでした。当時はお客さまも上市の実現性を疑っていましたが、このフープ品を見て「これほどまでに品質の高いものをすぐに作れるとは!」と驚いてくださいました。これを機に、お客さまはもちろんのこと、社内でもこの製品の開発に本気で取り組もうという気運が高まりました。最終的には幹部自ら「君たちの想いとこの材料の価値はよく分かったから、やりたいようにやってみろ!」と背中を押してくれて、とても胸が熱くなりましたね。

T.K. フープ品はお客様のリクエストでした。ですが、既存のラインでフープ品の作製は不可能で……。しかも、新規ライン立ち上げの予算獲得は厳しい状況にありました。そこで、技術研究所にあった古い設備を低予算で改造し、何とか数10メートルのフープ品を作れるだけの試作ラインを整備したんです。

K.Y.  T.K.さんから何食わぬ顔で「できました」と報告を受けた時は、思わず「本当に!?」と声を上げてしまいました(笑)。この頃にはこの開発に賛同する仲間も増え、それは次第に大きなうねりに。東洋鋼鈑の総力が結集し、パズルのピースが一つ一つピッタリとはまっていくような感覚を覚えました。

T.K. 続く課題は「量産」でした。仕様決めにおいても大きな課題に直面しましたし、技術研究所の試作ラインを24時間体制で動かすといった異例の事態にも陥りましたが、必要部署が一致団結した結果、量産のステップへとつなぐことができました。新設ラインが立ち上がり、実際に動いているのを見た時の感動は忘れることができないですね。トップダウンではなくボトムアップで、これほどまでの成果を上げたプロジェクトは当社の歴史においてもなかなかないと自負しています。

にこやかにインタビューへ参加する3名の姿

新製品開発のやりがいを教えてください

社内資料が掲示されている前で笑顔の3名

K.Y. 技術屋なら、いつか自分が作った製品を世の中に出したいと思うものです。今回、それを実現できたのは何よりの喜びですね。新しいことにチャレンジして目標を達成できたこと、グループや部門を超えた横断的な取り組みでゴールに到達できたことにも強い満足感を覚えました。また、今回のプロジェクトを通して新たな一歩を踏み出せたことで、自分たちはまだまだやれることがあると思えたのも幸せなことです。今後もさらなる一歩を踏み出していき、仲間や会社、お客様、ひいては社会への貢献につなげていきたいですね。

S.H. 世界に存在しないものを生み出してみたいと思っていたので、今回の新製品開発を通して、自分の力でめっきの技術の進化を実現できて感無量です。東洋鋼鈑の卓越したものづくりの力と素晴らしいチームワークを生かし、社会やお客さまに新しい価値を提供する――。それが何よりのやりがいです。今回の成功でテーマを進化させるチャンスが広がったので、今後も我々にしかできないことに挑戦し、それを会社の強みにしていけたらと思っています。

T.K. 私もこの東洋鋼鈑で何か一つでも新しいものを生み出せたらと思いつつ、なかなか形にできずにいました。そんな中、S.H.さんがやりがいのあるテーマを見つけてきてくれたので、ぜひ一緒にやりたいと前のめりで飛びつきました。成功までの過程にはさまざまな課題がありましたが、それを乗り越え、やり切った達成感と、自分の仕事が世の中の役に立っているのだという充実感をかみしめています。

社内資料が掲示されている前で笑顔の3名

新製品開発の醍醐味を若手にも!
より良い製品づくりのために

今後のビジョンを教えてください

T.K. 現在は、今回開発した新製品の製造ラインの係長業務を担当しているので、製造の安定化が目下の目標です。製品というものは、出来上がったらおしまいではありません。課題を一つ一つ解決し、より品質の高いものをお届けできるよう努めるのが我々の役目です。幸いなことに、今回は扱う製品の開発そのものを経験していますので、この製品の価値を仲間と共有し、力を合わせながらより良い製品づくりを目指していきたいです。

K.Y. 新製品の開発、仕様決め、ライン立ち上げ、量産のサイクルを、できるだけスムーズに回せる体制を作っていきたいですね。私は技術研究所、マーケティング部、生産技術部での経験があり、今回の新規製品開発および事業化においてはその中心にいたので、この実績を生かしながら若い世代が見つけてきたアイデアの種を、一緒に育てていきたいと思っています。 また、電池部材事業は、今や東洋鋼鈑の大きな柱です。マーケティングと開発が一体となって取り組める体制を強化し、製造ラインの仕様変化のスピードに負けないよう、スクラップ&ビルドの最適化も図っていきたいです。

S.H. 今回の新製品開発プロジェクトを通して、電池市場の新しいニーズと東洋鋼鈑の技術要素がマッチしていることをあらためて確認しました。当面はこの分野で新製品の開発に取り組み、当社の事業の重要な柱へと成長させていきたいです。そして、自分自身がプレーヤーとして味わってきた製品開発の醍醐味を若手にも体験してもらえるよう、今後はマネージャーという立場でメンバーをサポートしながら、より良いものづくりに貢献していきたいと考えています。

最後に、就職活動中の学生の皆さんへのメッセージをお願いします!

野外の会社のロゴマークをバックに談笑している3名

S.H. 東洋鋼鈑には、自分が作った製品を世の中に送り出せるチャンスがあります。自分もチャレンジしてみたいという学生の皆さん、ぜひ一緒に夢を叶えましょう!

T.K. 今回のプロジェクトのように大勢で一つのテーマに取り組んでみたい人、自分で見つけたテーマを最後まで一人でやり抜いてみたい人、いずれも大歓迎です。東洋鋼鈑には、それぞれがやりたいことを応援してくれる風土があります!

K.Y. オンリーワンの製品開発を、入口から出口まですべて経験できる会社です。もともと若手の登用に積極的ですし、今回の新製品開発プロジェクトの成功で新しい風も吹きました。自分の力でイノベーションを創出したいと考えている学生の皆さんには、ぜひ当社を選択肢の一つに加えていただきたいです。

野外の会社のロゴマークをバックに談笑している3名
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